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銭湯・奥の細道 (東北と全国の銭湯巡り)

東北を中心に、全国の銭湯・スーパー銭湯・日帰り温泉・サウナ・共同浴場を紹介します!

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「銭湯」とはなにか? 第2章/2021年・現在の銭湯の状況

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「銭湯」とはなにか?
今回は、銭湯を取り巻く状況が平成から令和にかけて大きく変わった事にも触れていきたいと思います。
全体に長文になってしまったので、3章に分けました。
1章ずつ読んでもいいし、興味ある章だけ読んでも構いません。

※この記事では、前章で説明したように原則、「銭湯=一般公衆浴場」という定義で話します。

◎第1章/銭湯とはなにか?【狭義の銭湯】  前回

◎第2章/2021年・現在の銭湯の状況  今回

◎第3章/銭湯とはなにか?【新しい銭湯】 次回

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◎第2章/2021年・現在の銭湯の状況

ここ数年、銭湯がテレビや新聞、雑誌などのメディアに取上げられる事が増え、新しい人が銭湯を引き継ぐような事例も出て来て、一部では「銭湯ブーム」といわれるような部分もありますが、
銭湯全体としては、減少の流れがここ数十年ずっと続いています。
全盛期の昭和43年(1968年)頃には全国に22,000軒以上あった銭湯は、それ以降数十年間はずっと減り続け、令和3年(2021年)は約3,200軒ほどに。

銭湯(一般公衆浴場)の減り方や現在の数は、地域によって大きく差があり
東京23区、大阪府、京都市などの都市部や、鹿児島や大分、富山、青森などの温泉地では、現在も銭湯は多くの軒数が残っており、その地域で大きな位置を占めています。
一方、「銭湯が消えた」市町村も多くあります。県内の銭湯の数が一桁の県も、現在では珍しくはないです。※温泉天国の山形県も銭湯(一般公衆浴場)の数は0です。

実際に2021年最新の銭湯マップを見てみると、よく分かります。
代表的な例、東京都、愛知県、茨城県の銭湯の現在の状況を見ていきましょう。

・・・銭湯(一般公衆浴場)。 ・・・スーパー銭湯や日帰り温泉。 
・・・日帰り入浴可能なホテルや宿。 ・・・休業、閉店    に大別しています。

【東京都】
東京23区内は、圧倒的に銭湯多いが、郊外に行くと他の温浴施設の率が上がるのが分かります。





【愛知県】
名古屋を中心とする地域は銭湯率が高いが、他の地域だとスーパー銭湯などの温浴施設とのバランスが逆転しています。





【茨城県】
銭湯の数が非常に少なく、公営浴場や日帰り温泉、スーパー銭湯が充実している特徴があります。





このように全国47都道府県、銭湯の状況や数、他の温浴施設とのバランスは大きく違います。
全国的に見ると、愛知県や茨城県のような状況になってきている県が多いです。
東京都のような銭湯の残り方をしている都道府県の方が、逆に少数です。
興味のある方は、当サイトで「全国の銭湯、スーパー銭湯、日帰り温泉、サウナ 一覧とマップ」で参照してみてください。




東京23区など都市部で、銭湯が多く残っている理由としては
人口(利用者)の多さ、土地の広さの問題で大型浴場が進出しにくい、行政からの補助金、同業者多い事=浴場組合の力などがあります。
 銭湯は都市部に多いのは明らかですが、必ずしも人口比ではない部分もあります。ちなみに、埼玉県では人口の多い川越市(35万人)、草加市(25万人)ではすでに銭湯が0ですし、全国的に見ると人口10万人、20万人ある都市でも銭湯がないという所が珍しくありません。


銭湯が減る・廃業する理由として(経営者へのアンケートで多く上がるもの)
利用客の減少、設備・施設の老朽化、燃料や光熱費の上昇、経営者の高齢化・体調不良、スーパー銭湯等の出現などがあります。
 あと「後継者難」というのもあるが、これメデイアの記事ではよく「後継者不足」と書かれる事多いが、実際に銭湯経営者の方に話聞くと、銭湯経営も思わしくないし大変な仕事なので、現経営者が自分の代で廃業する事を決めていて、子どもに継がせる事や新規運営者募集を考えていない事が多いです。
 通常の建物でも水回りは故障や経年劣化が激しいように、常に湿度と温度が高い銭湯の建物は、施設・設備の修繕や更新が必ず定期的に必要になります。また、その設備修繕にも通常の建物よりはるかに多額の費用がかかります。蛇口(カラン)や設備一つ取ってみても、浴場用の特殊なもので一般用に比べ値段が数倍から10倍近くする事もあります。





ここ数十年間ずっと銭湯が減り続けている。と書きましたが
銭湯が減り続けている大きな根本的理由として2つあると考えます。

1.全国的な住環境の変化による家風呂の普及。
1960年代60%前後だった住宅の家風呂の普及率は、現在は95%を越え、ほぼ100%に近くになっています。
それによる、人々の生活の中での銭湯の役割の変化。


2.銭湯(一般公衆浴場)が増えない[新規開業ができない]、ルールや仕組み、状況があるから。

特に2点目については言及する人や記事がほぼないのが不思議です。ある種タブーになってるのかな?

コンビニやラーメン屋も、毎年全国で大量に閉まっています。
でも、コンビニやラーメン屋が、街からなくならないのはなぜでしょう?
それは、閉店する数と同数か、それ以上新規開店してるからです。そうして、ある種の新陳代謝を繰り返しています。


銭湯はここ数十年、子どもが生まれていない村であり、数が減り続けるのは必然です。

毎年一定数の銭湯が閉店廃業しています。これは上記書いた理由が複数あり、仕方がない部分もあります。
同時に、ここ数十年、ほぼ新規開業がない(増えない)特殊な業界なので、全体としては常に減り続ける訳です。

 その銭湯が減り続ける原因=増えないルール、枠組みが出来たのには、過去や現在の銭湯経営者も関わっています。
 大正、戦後昭和の時代、銭湯がたくさん出来て増えすぎた時期がありました。その中で同業者間での過度な競争が起きないように、それによる閉店廃業が起きないように、同業者の団体(浴場組合)や銭湯間や新規開業などのルールを作ったりしてきました。また、浴場組合で団結して、数の力を使い行政などと交渉して補助や有利な条件を勝ち取って、既存の自分達の銭湯の営業を守ろうとしました。
 その結果、銭湯への物価統制令が維持され続けた事もあり、多くの都道府県で、「銭湯の新規開業が難しい」、入浴温浴施設を新たにオープンする場合「銭湯(一般公衆浴場)で開業しても経営メリットが少ない」状況ができてしまいました。

※銭湯(一般公衆浴場)に対する物価統制令の見直し・廃止の議論は、1970年前後と1999年前後に大きく2回あり、特に1970年の方は銭湯経営者内でも存続と廃止で意見が二分したようです。結果として、現在も制度として継続されています。

自分達が経営する銭湯を守ろうとした結果、銭湯全体が減り続ける状況が出来てしまったのは、皮肉な結果です。


不思議に思いませんか?
近年のサウナブームで、全国各地に新しいサウナがどんどん出来ている一方、
都内中心にメディアで「銭湯」を取上げられ、ある種の銭湯ブームなのに、新規開業する銭湯がほぼない事を。
一時期のタピオカブームまでは行かなくても、都内に何軒か新しい銭湯が開業してもおかしくないのに、聞くは既存の銭湯のリニューアルオープンのニュースばかりです(これはこれで良い事ですが)





全盛期の昭和43年頃22,000軒以上あった銭湯も、それ以降数十年間はずっと減り続け、現在は約3,200軒ほどに。
昭和40年頃は公衆浴場業の94.8%を、銭湯(一般公衆浴場)が占めていましたが、その割合は年々低下し、令和元年では全体比13.9%ほどです。この50年間で入浴施設・温浴施設もそれだけ多様化したという事です。

全国的に見ると、昭和後期から平成・令和にかけてのこの50年間で、一部の地域(大都市部と温泉地)を除いて
銭湯(一般公衆浴場)は、入浴施設の中の主流ではなくなった。というのが今の現実です。



ですが、全国の街から入浴施設や外湯文化が消えたかというと、そうではありません!
平成からの30年ほどで、減り続ける銭湯(一般公衆浴場)に代わり、全国で数を増やしてきたのが、日帰り温泉やスーパー銭湯、公設温泉などの大型浴場、スポーツジムに併設した浴場など「その他の公衆浴場」といわれる温浴施設です。

平成・令和の時代を経て、
銭湯を見る語る上でも、「多様化」「地域性」という広い視点を入れていくべきだと考えます。
次回は、この「その他の公衆浴場」『新しい銭湯』について。


長文読んでいただいてありがとうございます。
次回更新も良かったら、読んでください


◎第1章/銭湯とはなにか?【狭義の銭湯】  前回

◎第2章/2021年・現在の銭湯の状況  今回

◎第3章/銭湯とはなにか?【新しい銭湯】 次回




参考文献

・「全浴連三十年史」 全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会 
・「生活衛生関係営業ハンドブック」 全国生活衛生営業指導センター
・「銭湯空間」 今井健太郎
全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)
衛生行政報告
・各都道府県の公衆浴場関係の条例


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