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銭湯・奥の細道 (東北と全国の銭湯巡り)

東北を中心に、全国の銭湯・スーパー銭湯・日帰り温泉・サウナ・共同浴場を紹介します!

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なぜ、銭湯の入浴料金は決まっているのか?? 銭湯と物価統制令の謎に迫る

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東京都の銭湯の入浴料金改定(2022年)のお知らせ ※2023年7月より大人520円に再度改定されます

ここ最近、まちの銭湯の入浴料金が上がる。というニュースがよく流れますね。

多くのニュース解説では、以下のような説明がされます。

〇〇県では、銭湯の入浴料金が×月から大人500円に値上げされることになりました。

まちの銭湯(一般公衆浴場または普通公衆浴場)は、地域住民の日常生活において必要な施設として、“物価統制令”によって都道府県ごとに入浴料の上限価格が決まっています。なので、入浴料金を自由に上げられません。一方、スーパー銭湯や日帰り温泉、サウナなどの「その他の公衆浴場」は、自由に入浴料金を決められます。
銭湯の入浴料金は、県の審議会などで上限価格改定について審議され、知事が決定します。
戦後直後にできた物価統制令の対象は、現在この銭湯の入浴料金だけです。



ここまで聞いて、おや?と思った方多いのではないでしょうか。
なぜ戦後の混乱期に制定された法律が、令和の現代にまだに残っているのか?
しかもその対象は、銭湯だけ??
日常生活に必要なものは、お米とかパンとか水とか他にもあるんじゃない???
生活に必要というが、私は家に風呂あるんで、銭湯ほぼ行かないです・・・
そもそも、私が住んでいる町、銭湯ないんですけど・・・


それらの意見はごもっともです!
ですが、その疑問にマスコミのニュースの中では答えてくれません。
ニュースに出てくる当の銭湯の方も、「経営苦しいです」「銭湯どんどん廃業しています」は必ず言うけど、上記の疑問にはなぜか答えてくれません。

では、なぜ銭湯の入浴料金は決まっているのか?
なるべく分かりやすく解説します。かなり長い記事になってしまいますが、お付き合いください。

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目次
1.物価統制令とは? 物価統制令廃止問題
2.なぜ、物価統制令廃止に、銭湯業界は反対したのか?
3.公衆浴場確保法の成立
4.物価統制令は、銭湯の「手首を縛る縄」であり「命綱」でもある
5.むすびにかえて



※関連記事 
→ 全国の銭湯入浴料金と軒数 一覧表 (令和5年2023年最新版)
→ 銭湯とはなにか? 銭湯・公衆浴場研究入門





なぜ、銭湯の入浴料金はいまだに「物価統制令」により決まっているのか?

それは、多くの銭湯にとって、物価統制令が
「手首を縛る縄」であると同時に、自分達の「命綱」でもあるからです。


簡単に言ってしまうと、「物価統制令」は銭湯の入浴料金を制限すると同時に、
銭湯の営業を守る制度や法律、行政からの補助金や助成、水道料金や税の軽減とも大きく関係しています。
だから、変わらない、変えたくないのです。


その理由や銭湯と物価統制令の歴史、法律の問題などを、これから見ていきましょう。


1.物価統制令とは? 物価統制令廃止問題

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銭湯の入浴料金表(埼玉県)

「物価統制令」とは、昭和21年(1946年)3月太平洋戦争が終わった直後に公布施行された法律です。
終戦直後の混乱と物資不足で、物の値段は跳ね上がり、世の中は超インフレ状態でした。そうした中、食料や様々な物の値段(物価)の高騰や暴利、不正取引を抑える、取り締まるために物価統制令は作られました。
その後、日本が戦後の経済発展を遂げていく中で、物価統制令対象だった物のほとんどが適用から外されていきました。代表的な例として昭和47年(1972年)の米価、お米の小売価格自由化などがあります。
そして、令和5年(2023年)現在、唯一対象として残っているのが銭湯(公衆浴場)の入浴料金です。

銭湯の入浴料金は、都道府県の審議会などで上限価格改定について審議され、知事が決定します。
審議会は、県内の銭湯事業者(公衆浴場組合)の要望によって開かれ、銭湯の収支状況、軒数、利用者数、燃料価格などのデータを基に、学識経験者、利用者代表、銭湯事業者代表、行政で行われます。「公衆浴場入浴料金審議会」などの名称で行われている事が多いです。入浴料金の他に、様々な銭湯に対する行政の施策などについて話し合われる場合もあります。


実は、あまり知られていませんが
物価統制令自体、昭和40年代(1965年~)の時点でもう法律としてはその役目が薄れ、主管する当時の経済企画庁では、物価統制令そのものを廃法にすることが検討されていました。

ですが、当時の銭湯業界はこれに反対。(正確には一部賛成なのですが、詳しい説明は次の章で)
昭和40年代はまだ風呂のない家庭も多かったので、日々の入浴料金が上がるのを不安視した消費者代表なども反対したようで、この時の物価統制令の廃止はなくなり、銭湯料金など一部の品目を対象に残して存続されることになりました。




2.なぜ、物価統制令廃止に、銭湯業界は反対したのか?

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「全国浴場新聞 昭和44年9月号」より

ここ最近の銭湯の燃料高騰のニュースでも、「入浴料金を決まっていて上げられない」と嘆く銭湯の方がよく登場しますし、自由価格の方がいいじゃない?と思いますが、ここには難しい問題がありました。

昭和42年(1967年)、物価統制令が廃止の方向性が具体的になり始めた頃、銭湯や公衆浴場組合(銭湯の同業者団体)の中でも、この問題はかなり議論され、賛成・反対含め様々な意見が出ました。

昭和30年代(1955~1964)は、銭湯業界も戦後復興から隆盛を極めた「銭湯黄金期」でした。当然景気も非常に良く、銭湯経営者の中でも、入浴料金を自由化すべきという気運が高まっていました。ですが、昭和40年代(1965~)に入ると、廃業する銭湯も増え始め、業界全体が安定・斜陽期に入り始めます。その時期に物価統制令廃止の問題がでたのです。

もし物価統制令が廃止になり、入浴料金の自由化・距離制限の撤廃になると、
同時に、既存の銭湯を守っている多くの制度 → 銭湯の乱立防ぐ為の「銭湯間の距離制限」、銭湯の経営安定の為の「行政からの補助」なども一緒になくなるのではないか・・・
終戦後に自分達が苦労して作った銭湯業界の基盤や、ルール、秩序が崩れるのではないか・・・
新規参入してきた銭湯がすぐ近くに出来て、自分達の銭湯のお客や利益を奪われるのではないか・・・
結果、自分達の銭湯の営業や立場が危うくなるのではないか・・・

物価統制令廃止によるメリットよりも、上記のような様々な強い危惧や不安が銭湯業界に広がったようです。

入浴料金自由化については認めるという形で銭湯業界の意見が一応まとまった時期もありましたが、合わせて撤廃が検討されていた「銭湯間の距離制限」
(今ある銭湯の近くには新しい銭湯は作れない・営業出来ないという適正配置規制。※現在も残っている)がなくなる事への銭湯業界の反発が非常に大きかった事が、当時の資料から読み取れます。

銭湯業界内、国などの議論は継続して行われ、昭和46年(1971年)頃に現状の制度を変えず維持する方向で一応決着(?)しますが、時代や公衆浴場の役割の変化により、その後も物価統制令廃止、制度の見直しは度々国や都道府県などから出ていますが、その度に銭湯業界の強い反対もあり、変わらず現在に至っているわけです。


余談ですが、
今でこそ、「銭湯のご主人」といえば番台フロントにいる温和なイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、
当時の銭湯経営者は、戦後の混乱期に、北陸・新潟などの地方から、文字通り裸一貫で都会に出てきて、下足番や燃料集めなどの下働きから始め10年以上寝る間もなく朝から晩まで働き、やっと自分の銭湯を持って一国一城の主になった方達が多くいました。当然自分の力で成功したというプライドがあるし、血の気も多い。
当時、公衆浴場に関する様々な問題、入浴料金、銭湯の未来について、銭湯同士や公衆浴場組合内で意見を言い合い活発に議論がされていました。現在では考えられないが、銭湯が行政や警察とやり合ったり、自分達の主張を伝えるためにデモや決起大会、ストライキ(銭湯の一斉休業)も行っていました。
現在もその気質は少し残っていますが、子分と親分、同郷や同族でのつながりも強い業界です。当時の銭湯経営者の一代記を読むと、ドンパチこそしませんが、『仁義なき戦い』を連想させる部分もあり、非常に興味深く面白いです!
そうした銭湯経営者の一致団結した運動や交渉の結果、行政からの様々な施策、予算、融資などを勝ち取って来たのが、あまり語られない昭和の「銭湯の歴史」です。




3.公衆浴場確保法の成立

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「全国浴場新聞 昭和56年6月号」より

昭和57年(1982年)4月に、銭湯と物価統制令の関係を語る上で大きな法律が施行されました。
「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」(以下:公衆浴場確保法)です。

公衆浴場確保法を抜粋要約すると
「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない施設であるとともに、住民の健康の増進等に関し重要な役割を担つているにも、かかわらず著しく減少しつつある状況にある。国及び地方公共団体は、公衆浴場の経営の安定を図る等必要な措置を講ずることにより、住民の公衆浴場の利用の機会の確保に努めなければならない。」

と書かれています。

昭和から現在に至るまで、行政(国や都道府県、市区町村)は、銭湯の数と住民の入浴機会の確保の為に、まちの銭湯(一般公衆浴場)に対して、様々な補助・助成、税金面での優遇をしています。その法的根拠となっているのが、この「公衆浴場確保法」なのです。


行政からの銭湯(一般公衆浴場)に対する施策としては、
銭湯に関わる費用の補助金(釜ボイラーの更新、設備・施設の修繕・改修、燃料費など)、銭湯の様々な事業への助成金、割安な上下水道料金、固定資産税の減免、国民生活金融公庫・銀行などからお金を借りた場合の利子補給などがあります。

ここで注意しないといけないのは、行政からの銭湯に対する施策は、都道府県またその市町村によって、その額や対象事業が大きく違います。上記に上げた内容についても、銭湯の減少や自治体の財政悪化などの理由で、行われていなかったり、以前に比べて対象事業や金額が減っている自治体も多いです。
そうした中で、全国で一番行政からの補助が手厚いのは東京都(特に23区)の銭湯です。
東京都からとそれぞれ区市から出ている補助金があり、合わせると毎年約40~35億円前後の予算(税金)が都内約450軒の銭湯に対して使われています。なぜここ最近都内の銭湯のリニューアルが多いのか?それは銭湯に対する補助金が大きく関係しています。
銭湯に対する行政の補助は、上記のように地域差が大きくあるためか、業界内でタブー視されているのか、銭湯の方はこの件についてほとんど話さない、話したがらないで、マスコミも触れないし、あまり一般には知られていません。


公衆浴場確保法に話を戻すと、第二条 定義として重要な文章が書かれています。
この法律で「公衆浴場」とは、公衆浴場法第一条第一項に規定する公衆浴場であつて、物価統制令第四条の規定に基づき入浴料金が定められるものをいう。

まちの銭湯「一般公衆浴場」は、入浴料金の上限価格が決められている代わりに、様々な行政の補助が出ています。一方、スーパー銭湯やサウナなどの「その他の公衆浴場」には、自由に価格が設定できる代わりに、行政補助や税制優遇はほぼありません。
その両者を分けているのが、『物価統制令』なのです。
なので、物価統制令がなくなれば、同時に公衆浴場確保法などの銭湯に関連する法律や制度の根幹が大きく揺らぐ事になります。


2023年現在、全国的な燃料費高騰を受け、多くの自治体で公衆浴場に対する緊急の補助金が出ています。
ですがその条文には「一般公衆浴場(普通公衆浴場)」「物価統制令に基づき入浴料金の上限額が定められている公衆浴場」という一文が必ず入っています。なので、燃料費高騰の緊急補助金は、銭湯(一般公衆浴場)にのみ出て、スーパー銭湯やサウナなど(その他の公衆浴場)には出ていません。


今回は記事があまりに長くなるので、深くは触れられませんが、重要な点をいくつか。

公衆浴場確保法の昭和57年(1982年)施行と平成16年(2004年)の一部改正によって、
公衆浴場に、日常生活に保健衛生上必要な「入浴」の他に、『健康増進』と『地域コミュニティーの拠点』としての役割が追加されたのもポイントです。

銭湯の同業者団体である「公衆浴場業生活衛生同業組合(縮めて、浴場組合と呼ばれる事が多い)」と、また銭湯以外の理容、美容、クリーニング、旅館、飲食店、喫茶店、食肉、興行場などの10の生活衛生同業組合の存在にも触れなければなりません。この組合は、中小企業の多い業界で、過当競争が起きないように、正常な経営が行われ、業界の振興、利用者の利益などを目的とした団体です。
一般から見ると、自由競争を阻害している、独占禁止法違反ではないかと思うような、業界のルールや規制、動きが容認されていたり、また行政の施策がされていたりするのは、この生活衛生同業組合の存在とそれに関する法律があるからです。
公衆浴場組合は、銭湯同士の情報交換・繋がり、同業者間のルールや規制、行政からの補助金、銭湯のイベント、入浴料金の審議会などに大きく関わっています。


この銭湯と物価統制令の問題について考える場合、銭湯と政治(特に自民党)との関係も興味深い点です。
昭和25年(1950年)の銭湯間の距離制限を盛り込んだ公衆浴場法の一部改正や、昭和57年(1982年)公衆浴場確保法には、自由民主党(旧民主自民党)の国会議員が大きく関わっており、ともに議員立法によって成立しています。

また、全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)の政治団体として「全国公衆浴場業政治連盟」(所在地も代表も全浴連と同じ)が存在し、前述の公衆浴場確保法が改正された2004年と前年の2003年の2年間に、赤坂の高級料亭で法審議にかかわった国会議員らを計16回も接待していた(計約682万円)ことが東京新聞で報道された(東京新聞2005年9月30日夕刊)。この全国公衆浴場業政治連盟は現在も活動しており、毎年自由民主党議員のパーティー券購入などをしている。

銭湯業界は、戦後一貫して自由民主党との関係が深く、銭湯業者の大会などでは自民党の厚生労働族の大物議員が挨拶に来ることも珍しくないです。(もちろん、個々の銭湯で働く人全てが、自民党支持者というわけではありません)




4.物価統制令は、銭湯の「手首を縛る縄」であり「命綱」でもある。

新・公衆浴場数グラフ2

昭和45年(1970年)頃から、銭湯は新規開業より廃業の方が多くなり、斜陽期に入り始めます。
家風呂の普及率はどんどん上がり、2023年現在は全国的にほぼ100%に近づきました。
銭湯「一般公衆浴場」は減り続ける一方で、スーパー銭湯、日帰り温泉、サウナ、スポーツ施設など「その他の公衆浴場」は増え、現在ではその数は完全に逆転しています。
そうした中で、銭湯業界は自分達の銭湯を守るため、新規開業や参入しにくい制度を維持し、規制や制限の代わりに行政からの補助を受けるという方針を取りました。その結果、新規参入しにくく規制と制限が多い経営の自由度が低い銭湯(一般公衆浴場)は半世紀以上減り続けました。既存の銭湯は、民間企業でありながら、行政の補助に頼る体質の経営、業界になってしまったように見えます。
1982年の公衆浴場確保法の成立は、その流れが確立した大きなポイントだったと思います。

1982年以後の銭湯の状況はどうなったかというと
確保法の効果がなかったとは言いませんが、前述の通り銭湯が増えない(減り続ける)制度の根本は変わらないままなので、全国的に銭湯(一般公衆浴場)の廃業と減少は止まらず、人口が多く行政補助も手厚い東京都23区などに代表される都市部や温泉地以外の地方では、まちの銭湯は大半が消えたもしくは消えかかっていると言っていい状況です。人口10万人20万人越えている市でも、まちの銭湯(一般公衆浴場)は1軒もないという所が珍しくないです。

戦後から長年続く行政の銭湯に対する施策や補助も、効果のある適切なものだったのかは疑問が残る部分です。


この記事の最初で述べた一文、覚えていますか?

物価統制令は、多くの銭湯にとって、
「手首を縛る縄」であると同時に、自分たちの「命綱」でもある。


自分の店の商品(入浴料金)を、自由に価格を決められないというのは店舗運営、経営では手を縛られているようなものです。ですが、その手首を縛る縄は、自分の体を支える命綱(行政からの補助や距離制限など)とつながっているために、多くの銭湯に物価統制令、行政による統制価格は現在も必要なのです。

また、現在全国の多くの銭湯が施設設備の老朽化、経営者の高齢化の問題を抱えています。
昭和30・40年代頃の銭湯にまだ体力があった時期ならまだしも、いま物価統制令という綱を切るような大きな変革すれば、入浴価格を上げるなど経営の自由度は上がっても、自分の体すら支えられない多くの銭湯が崖を転がり落ちていく可能性が高いです。
なので、今ある銭湯また公衆浴場組合は、どんなに経営が厳しくても(当たり前ですが儲かっている銭湯も一定数はあります)、ここ数十年間同業者が減り続けていても、物価統制令を廃止しよう自由価格への移行しようという制度改革の動きや本格的な議論にすらならないのは、そういう銭湯業界の事情があると思われます。

先日、あるニュース番組で「銭湯と物価統制令の関係」について取材したら、都内の銭湯50軒以上が取材NGだったらしい。
どの銭湯も、大なり小なり、制度、銭湯業界の問題点は認識していると思います。なにしろ、銭湯本体はもちろん、関連業者も減り続け、銭湯の営業を続けるのが困難な地域が出始めたり、すでに公衆浴場組合が解散した県もあったりします。銭湯業界全体の衰退がここ数十年間続いていることは誰の目にも明らかです。現状の制度が続く限り、全国の銭湯(一般公衆浴場)は今後も間違いなく減り続けるでしょう。
ただ、行政の補助や水道料金減免など、今ある銭湯が優遇されている制度なので、議論や制度見直しが始まれば、そうした行政からの優遇政策や特別扱いがなくなる・減る可能性があります。数年後の自分の銭湯の事を考えれば、未知の海原へこぎ出すよりは、問題はいろいろあっても現状の制度を維持する方がベターと考える銭湯が多いのも理解出来ます。取材NGの銭湯からすれば「寝た子を起こすな」という心境なのかもしれないです。


物価統制令と銭湯・公衆浴場に関する法律や制度は、間違いなく時代遅れで、
現代の入浴事情、全国の公衆浴場の状況や地域住民のニーズにも合っていない部分があるのは明らかです。


あまり知られていませんが、前述した銭湯間の距離制限や公衆浴場確保法については、その成立当時から、憲法違反ではないか、一部の業種だけ保護する法津は問題だ、とする意見が法律学者や政府内、内閣府法制局でありました。その為、国会議員提案の議員立法という形で成立しました。今より風呂のない家庭が多く、銭湯の社会的重要度がはるかに高かった昭和の時代ですら、法律としての問題点が指摘されてたのです。

日本中どの分野にも規制緩和が進み、市場競争を促進しようとする現代の流れの中で、数ある入浴・温浴施設(公衆浴場)の中で、銭湯という一部の公衆浴場業者だけ、行政の施策を受ける制度への違和感。また、行政の補助や税制優遇も、銭湯の数の維持・確保の問題の根本的な解決には機能していないという現実。銭湯に対する施策が「公共の福祉」や「住民の利益」に本当の意味で繋がっているのかという部分には議論の余地があると思います。





5.むすびにかえて。

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厚生労働省 『今日から実践!収益力向上にむけた取組みのヒント 公衆浴場業編』 より

ここからは、個人的な意見を中心に書いていきたいと思います。

上記のグラフは、厚生労働省が作った資料に入っていた20代~60代の一般消費者4万2千人に対する調査での結果です。生活に必要とされている「銭湯」より、「スーパー銭湯やスパ」の方が一般消費者の利用率が高いというか、驚きというか納得というか、個人的には結構考えさせられるデータでした。

銭湯関係ではよく、「銭湯」と「スーパー銭湯」を分けて語りたがる人いますが、実際は、料金的にも、施設的にも、利用者も、求められる役割も、その差は年々少なくなっていると思います。明確に両者は分けるのは実は困難です。

昭和・平成・令和にかけての人々の生活や住環境、時代の変化により
『入浴のみに特化した:まちの銭湯(一般公衆浴場)』から、『様々な温浴を楽しむ:スーパー銭湯、日帰り温泉、サウナ、スポーツ施設など(その他の公衆浴場)』へ。人々が求めるニーズも、銭湯・公衆浴場の役割も変わったと思います。
どちらが上とか下とかではなく、両者ともそれぞれ良い部分や魅力的な部分があります。

2020年2021年の緊急事態宣言の際、まちの銭湯(一般公衆浴場)は生活に必要な施設として営業が許されました。一方、スーパー銭湯や日帰り温泉、サウナ(その他の公衆浴場)は娯楽余暇を楽しむ施設の扱いで、休業を余儀なくされました。あの時、日常的にスーパー銭湯などを利用していた地域住民はどうしたのでしょうか?全国にはすでに銭湯(一般公衆浴場)がない地域が多いです。
住民にとっては一般公衆浴場、その他の公衆浴場なんて区分は関係ありません。両方ととも地域の大事な風呂・入浴施設です。地域住民の日々の生活を支える施設になっています。

個人的には、銭湯を含め公衆浴場関係の法律や制度、区分などの見直しが、
10年後20年後50年後の銭湯・公衆浴場の未来を見た場合、必要ではないかと思います。


公衆浴場組合による、銭湯業界内の横並びのルールや規制が現在も数多く存在し、結果として個々の銭湯の自由な営業が阻害されているのではないか、という事は以前から言われてきました。全ての都道府県ではないですが、入浴料金(上限価格なのに値下げも許さない)や営業時間の縛りなどがその一例です。
最近、東京都内で新規参入した会社運営の銭湯(一般公衆浴場)が公衆浴場組合に入れてもらえなかった件や、関西のある市でまちの銭湯と地元議員が共同で銭湯の新規参入を安易に認めないように市に要望書出した件を見ると、大きな矛盾と違和感を感じずにはいられません。

「銭湯が減った」「銭湯業界がピンチ」と盛んに言われますけど、その制度や状況を作っているのは今ある銭湯や公衆浴場組合にも一因があるのではないでしょうか?
はたして銭湯の歴史や文化、地域住民の入浴機会、ライフラインを、公衆浴場組合に入っている銭湯のみが継承し守っているのでしょうか?

今ある銭湯や公衆浴場組合は、銭湯の料金や営業時間などの「多様性」を認め、また企業も含め新規参入を積極的に受け入れる業界に変わって欲しいと願います。時代は変わりました。


個人的にはまちの銭湯が大好きです。好きな銭湯のある街、お世話になった方もたくさんいます。
自分の払った税金が銭湯の為に使われている事に大きな不満はありせん。
同時にスーパー銭湯や日帰り温泉も大好きです。広い露天風呂や湯上がりのめしやビール最高でしょ!
利用者からすれば両者の分け隔てはなく、両者ともに発展し、10年後20年後50年後も残ってくれているのが、僕の考えであり願いです。




最後に、2016年熊本地震の際に取材した、地震直後毎日2000人以上の入浴支援した熊本市のあるスーパー銭湯(温泉施設)の支配人の言葉が印象に残っているので紹介します。

「この会社は、元々製糸会社だったので近隣に迷惑をたくさんかけた。地域貢献できる喜ばれる事業として風呂屋を選んだ。今回それが実現出来て、風呂屋やっていて良かったと思う。今回のような災害時も通常時も、同じ入浴という健康や生活を向上させる事業をしているのに、スーパー銭湯と一般公衆浴場で、下水道の料金の差が数十倍なのはおかしいと思う。」



非常に長文でしたが、最後まで読んでいただいて感謝です。

勘違いしないで欲しいんですが、
別に、銭湯業界批判や補助金カットを訴えたいのではありません。
特に最後の章に書かれた個人的な考えが全て正しいとは思いません。

銭湯については問題点と同時にまだ改善の余地や可能性もたくさんあると思います。
この記事が、銭湯について、より良い方向へ、みなで考え議論するきっかけや材料になればいいと思っています。

銭湯LOVE♨





○参考文献

厚生労働省  『衛生行政報告例』「公衆浴場数」 
東京都生活文化スポーツ局  『区市における公衆浴場関連施策の概要』 
『公衆浴場史』   公衆浴場史編纂委員会編   1972年
『全浴連三十年史』  全国公衆浴場業環境衛生同業組合 著   1990年
『全国浴場新聞』  全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会 
『30年のあゆみ』  東京都公衆浴場商業協同組合  1980年
『大浴30年のあゆみ』  大阪府浴場商業協同組合30周年記念誌編纂委員会 編  1984年
『埼浴六十年のあゆみ』 埼玉県公衆浴場業環境衛生同業組合 1985年
星野剛 『湯屋番五十年 銭湯その世界』  草隆社 2006年
木藤 伸一朗 「公衆浴場と法」  『立命館法学』 2008 年 5・6 号(321・322号)
厚生労働省  『今日から実践!収益力向上にむけた取組みのヒント 公衆浴場業編』 2019年





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