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銭湯・奥の細道 (東北と全国の銭湯巡り)

東北を中心に、全国の銭湯・スーパー銭湯・日帰り温泉・サウナ・共同浴場を紹介します!

2020年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2020年04月

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銭湯のミライとは? ~君はもう新しい「浴場業の振興指針」を読んだか~【前編】

浴場業の振興指針


「浴場業の振興指針」とは?
「浴場業の振興指針」とは、国(厚生労働省)が定めた法律に準ずる銭湯(公衆浴場)業界のガイドライン的なものです。各銭湯や各浴場組合(銭湯の業界団体)はその指針に書かれた内容を読んで、そこに示された内容や課題等に向け取り組む事が求められています。中身については、5年に1回改定され、厚生労働省の会議で銭湯経営者代表も参加し内容を決めています。それが今年2020年3月に改定されました。

銭湯と同様に、生活衛生関係営業の16業種(飲食店や理容、美容、旅館ホテル、映画館等)も13の指針があります。
特に、銭湯(一般公衆浴場)は他業種やスーパー銭湯・温泉施設に比べて、行政からの補助金や助成減免の額が大きく、公共性の強い施設なので、こうした指針のもつ意味合いもかなり重いと考えます。

でも、この「浴場業の振興指針」、銭湯経営者・働く方ですらちゃんと読んでる人そんなに多くない気がします・・・
この指針に対して、各県の浴場組合は「振興計画申請、実施報告書」の提出を求められているので
各県の浴場組合の理事クラスは当然読んでいるのだろうと思いますが。

この「浴場業の振興指針」は関連資料も含めて、勉強になる部分や参考になるデータ多いので(その為に書かれてるのだから当たり前か)銭湯の経営者の方や働いてる方・関連団体の方はぜひ読まれると良いと思います。
きっと参考になるはずです。


「浴場業の振興指針」本文を見る前に
この指針を決める会議(第34・35回 厚生科学審議会生活衛生適正化分科会)で配られた資料の中に
国・厚生労働省がいまの銭湯業界の分析した資料があるので、事前情報としてそちらを見てみましょう。
なかなか興味深い指摘が多いです。



第34回厚生科学審議会生活衛生適正化分科会 令和元年12月10日資料 より引用


○浴場業の現況について
1.業界(組合員)の経営環境について 
連合会名:全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会  
 業界(組合員)の経営資源の強み

・日本の伝統文化である(入浴の起源は、奈良時代の光明皇后による立願施浴)。
・地域に密着した施設である。
・地域住民(特に高齢層)の健康増進のための施設である。
・ボランティアで銭湯を盛り上げる活動をしている会がある。東京・愛知・京都・大阪・神奈川等。東京で募集している銭湯サポーターは5600名(令和元年10月時点)を超え、SNSで銭湯情報や魅力などを発信してくれる。
・昨今、マスコミ等に取り上げられる機会が増え、好意的な記事が多い。
・他業種と比較すると組合加入率が非常に高い。
・公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律が制定されている。
・他業種と比較すると行政の支援や協力をいただける。
・災害時に地域貢献が可能であり、またAED設置を推進している。
・高齢者のみまもり支援やこどもSOS支援に協力できる。

 
 業界(組合員)の経営資源の弱み

・新規開業がほとんどない。
・転廃業に歯止めがかからず組合員が減少している。
・銭湯のない市町村が点在し、銭湯難民が増加している。
・経営者の高齢化や後継者人材難もあり、世代交代が進まないケースがある。
・施設の老朽化が進んでいるが、改善・修繕に多額の費用が掛かるため、転廃業につながるケースが見られる。
・行政の支援が減少傾向にある。

 
 業界(組合員)を取り巻く環境→(競合(大手等)、顧客、マクロ環境など)の良い状況

・訪日外国人旅行者の増加に伴い、日本独自の入浴文化に魅力を感じ、外国人利用者も徐々に増えてきている。マスコミ等からの問い合わせも多数寄せられている。
・若者の銭湯新規利用者がSNSなどにより徐々に増えてきている。
・体の健康だけでなく、心の健康にも効果があると評価が広まっている。

 業界(組合員)を取り巻く環境→(競合(大手等)、顧客、マクロ環境など)の悪い状況

・自治体や第3セクター等が運営する温浴施設等との競合問題。
・民間スポーツ施設等が「その他公衆浴場」から「一般公衆浴場」へ営業許可の変更を行い、近隣の銭湯と競合するケースが見られた。
・利用者の減少による入浴料金収入の減少。
・入浴料金収入が中心であり、付帯事業収入を得ることが困難である。
・家族経営が多く、長時間労働である。
・利用者は、常連客・固定客(高齢者層)が多い。



2.振興指針に定められた事業の取組状況等 
連合会名:全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会  
 組合で策定する振興計画の作成に当たっての指導、振興計画の取組状況等の把握

平成31年4月現在の各県組合(39組合)の組合員数分布は、下記である。
・10軒未満8組合 ・30軒未満18組合 ・50軒未満3組合 
・100軒未満5組合 ・100軒以上5組合
組合員数が少ない組合にとっては、振興計画申請、実施報告書などの書類作成が困難であるという。なお、組合事務所があるのは21組合にとどまる。

 組合への支援事業の取組状況

・外国人受入環境の整備(おもてなしステッカー、マナーポスター、銭湯見学会他)
・健康増進入浴法の情報提供(研修会、入浴法冊子やコミック、PRポスター他)
・体験入浴の普及事業(子供向けのマナー紙芝居、銭湯見学会他)
・健康入浴推進員の養成・生命共済の斡旋
・公衆浴場用の賠償責任保険の斡旋・受動喫煙の防止対策東京では100%禁煙化、大阪でも昨年4月1日より取組中。健康増進施設である銭湯は100%禁煙を目指す。
・大規模災害時の住民支援熊本地震、大阪北部地震、西日本豪雨等では入浴支援を実施し地域貢献できた。大規模災害時にはこのような支援を各県でも実施できるよう「熊本地震の活動記録、災害時マニュアル」等を配布した。

 特に成果の上がった事業(取組)

・外国人利用者については、受入環境の整備事業を実施した結果、次第に増加している。
・児童の体験入浴については、実施浴場が増え、その後、家族での利用があったという声を聞く。家族での銭湯利用の引き金になる可能性を秘めている。
・HSP入浴法、季節にあわせた健康増進入浴法、銭湯と幸福度の関わりPRなどが組合員にも好評であり、組合によってはHP等で積極的に公開発信している。

 取組が難しい事業

・施設及び設備の改善や、省エネ強化や環境保全の推進に関する事業これらの改善や推進には多額の費用を要する。このため、大規模修繕が必要な際に廃業してしまう組合員が多い。
・事業の承継等に関する事業改善方策

改善方法
・利用者を増やし、入浴料金収入の増加が重要である。経済力のある一部組合員は設備投資を行い、利用者を増やした者もいるが、大部分は、設備改善をしたくても、できない状況である。
・利用者の増加につながる創意工夫した組合員の取組を紹介する、アイディア集を配布したり、業界新聞で紹介したりしてサービスの向上につなげていく。
・地域住民の浴場利用の確保対策として、国や地方自治体のより強力な支援策が必要である。



第34回厚生科学審議会生活衛生適正化分科会 令和元年12月10日資料 より引用



なるほど、
さすが厚生労働省がまとめた資料だけあって、
現状・問題点等、的確に指摘してると思います。
良い点と悪い点をそれぞれ挙げているので、銭湯業界の全体像もつかみやすいです。
よくある銭湯関連の記事は、「銭湯は良い・素晴らしい」等の手放しに褒める記事や「銭湯は年に50軒閉店してる」等の全くデータに基づかない記事が多いので、こういう分析は非常に新鮮です。


ここからは自分の分析と持論です。
もちろん、以下の内容について異論等もある方はいるの思います。
長文ですが、一つの意見として読んでいただけると幸いです。


今後の銭湯業界は
・地域 (地元LOVE。
地域を愛しまた地域からも愛される銭湯
・行政 (
地域の公的機関・企業団体との協力。役所、保健、福祉、消防、学校その他)
・同業者 (浴場組合の活性化とそれを超えた繋がり。温浴業界との交流)

 の3本柱がより重要になってくると思います。
 後述する東京の銭湯が他の県より強いのは、この3つの土台が強いからだと自分は考えています。

銭湯の現状の中で良い点として他に
・SNS、ネット、メール等の普及によって、県や支部を超えた銭湯同士の交流や情報収集が安易になった点。
「昔(自分が銭湯継いだ時)は、近隣の銭湯の人しか知らず本当に孤独だった。でも、SNSで全国に自分と同じ考えや問題意識を持って取り組んでいる銭湯の方がいるのが分かって、大いに参考になったし自分も頑張ろうと思うようになった!」
↑これは銭湯経営者の方から本当によく聞く言葉です。

あと、良い点として
・若手銭湯経営者や外部の人材が活躍しだした点。
若手というのは世間でいう20代だけではなく、銭湯業界でいう若手は30代・40代・50代も含みます。
風呂屋の2・3・4代目、他の職業も経験して銭湯を継いだ方、
10年後はこの辺の方達が銭湯業界を引っ張る立場・流れになるのは確実だと思います。
外部の人材については、良い面と悪い面が・・・
まだ数としては少ないですが、京都滋賀のゆとなみ社や東京神戸のニコニコ温泉株式会社等が、従来とは違うやり方や考え方で、銭湯業界に新しい良い風を吹き込んでいるのは確かです!!
その一方、一部に自分勝手なやり方で問題も起こす人も出て来たので、この点は上手な関わり方が必要かと。
あと、「銭湯やりたい・働きたいという人」はSNS等もよく見かけますが
銭湯業界にいま最も足りてないのは、影となって銭湯業界のサポートをする、実務能力や調整力が高く、
人や組織団体の繋がりを作る力がある『裏方』『事務方』の役割が出来る人ではないでしょうか。
上記のような方がいま銭湯界隈を見回してもほぼいません。このような人がいま本当に必要だと思うんです。


上記の厚生労働省の資料の中で
取り組んでる・成果出てると書いてあるが、やや過大評価では思う部分もあります。
特に、外国人利用者、インバンド(外国人旅行者)についての記述。
近年、全国の浴場組合が非常に力を入れてる部分であり、利用者がどんどん増えてる事になっていますが
神奈川県の去年の調査で、銭湯の外国人実際の利用率は全体のわずか「0.3%」という数字が出ています。
また、ある県浴場組合では、日本人向けの銭湯情報もあまりないのに、外国人向けパンフレットだけ作っていたり・・・
外国人利用者の問題はもちろん取り組むべき問題ですが、銭湯業界全体での重要課題かは疑問が残ります。
その銭湯や立地や客層によって大きく変わる部分でもあるし、各銭湯ごとの対応で良いのではとも思います。


銭湯業界の問題点して、ここ数年ハッキリと形になって現れている
・「地方の銭湯崩壊」
・「銭湯の地域格差(具体的いえば東京23区とその他道府県)」

近年、東北地方で多くの浴場組合が解散状態になりましたが、今後同様のことが他の地域でも起こるのは必至です。
東京都内の銭湯全体は、廃業のペースも一時期よりは落ち着き、銭湯の入浴客数もここ数年増加傾向にあり、
やや明るい兆しも見えてきました。ですが、他の道府県の銭湯は、そういう明るい兆しがほぼ見えません!
解散はまだでも、浴場組合としての活動・機能が現時点でほぼ止まっているという県もいくつも聞いています。
たぶんこのまま行くと20年30年後は、銭湯として生き残っているのは
人口もあり行政からの補助も非常に手厚い東京都内の銭湯の一定数、とその他の大都市部のみになりかねない!
対策としては、組合数が減っている組合への具体的な支援や、組合解散した県については越境しての組合加入を可能にする。全浴連内の組織・ルールの変更は必要だと思う。

・「銭湯」=「東京の銭湯」??
東京都公衆浴場組合(東京の銭湯の団体)と、全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全国の銭湯の団体)は、
役員や事務方も両方を兼ねてる人が多く、事務所も同じ、実質ほぼ同一の組織といえると思います。
その為、都内の銭湯の事やその意見が、まるで全国の銭湯がそうであるかのように話される事があります。
今回の厚生労働省の資料や会議でも、これは当てはまるの東京だけじゃ?と思う内容が銭湯全体の話のように取上げられてる箇所もありました。

メディアやインターネット等も同様です。
銭湯がメディアに取上げられる機会が増えたり、
各銭湯のSNSでの情報発信が注目されるようになって(それ自体は良いことですが)
発言力や発信力が高い「少数の銭湯」の意見や状況が、「銭湯全体の意見や総意」のように取上げられたり、
受ける側もそう取ってしまう事があるように感じます。
でも、冷静に考えてみると、9割以上の銭湯がSNSはやってないし、メディアに頻繁に取上げられる事もありません。
こうした状況で、「サイレント・マジョリティ(声なき多数派)」である多くの銭湯の意見や実態が逆に分かりづらくなり、銭湯の本当の問題や課題が見えづらくなっているのではないかという心配もあります。
そうした声を取上げる、多くの銭湯にプラスになる活動をするが、
浴場組合に求められる役割、また今回の振興指針の意味だと思います。



銭湯業界の現状分析だけで結構な文量になってしまったので、
「浴場業の振興指針」本文については、分けて後編にしたいとおもいます。



銭湯のミライとは? 君はもう新しい「浴場業の振興指針」を読んだか?【後編】 (後日更新予定)



参考・引用資料 
「浴場業の振興指針」 令和2年3月公布
「厚生科学審議会生活衛生適正化分科会」 第34回(令和元年12月10日)第35回(令和2年1月8日)の資料と議事録
全国生活衛生営業指導センター 『生活衛生関係営業ハンドブック 2015年度』 平成28年3月
「各都道府県の公衆浴場入浴料金審議会」 の資料や議事録

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銭湯や温浴施設における「新型コロナウィルスへの予防対策・対応」について

◎銭湯や温浴施設における「新型コロナウィルスへの予防対策・対応」について。2020/5/30更新

 新型コロナウィルスの感染拡大を受け、国が4月7日にも、緊急事態宣言を発令する予定です。
対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に対して約1ヶ月間になる見込みです。
緊急事態宣言が発令された場合の東京都の対応策が4月6日発表されました。
その中で公衆浴場(銭湯)は、適切な感染防止対策の協力要請を行った上で開店を認めるという方針が示されました。
社会生活を維持する上で必要な施設(生活インフラ)」として、公衆浴場の他に、病院、スーパーマーケット、ホテル、飲食店、交通機関等が挙げられています。 → 緊急事態宣言へ都対応案

その為に、営業を続ける銭湯はより一層の適切な感染防止対策の実行が求められます。
下記の「新型コロナウィルス等の感染症への具体的な対策」を参考にしてください。


3月25日に熊本市東区の温浴施設で長期間滞在者の新型コロナ感染が判明し、その後他の利用者や家族にも感染者が相次いで確認され、クラスター(感染者の集団)の発生が懸念されています。 → 西日本新聞・記事
3月上旬、千葉と横浜のスポーツジム(お風呂、サウナ、岩盤浴も持っている施設)や福祉施設での集団感染が報告されているように、全国の銭湯や温浴施設が「対岸の火事」ではないですし、必ずしも安全とは言い切れません。

これだけ、全国に感染者が拡大し、また症状の出ない感染者も多数いると言われる状況から考えるに
適切な対応をしていても、銭湯や温浴施設の中で今後も感染者が出る可能性は十分にあると思います。

ただ、「全く適切な対応・対策をせずに、施設内で感染者を出た場合」と
「適切な対応・対策を可能な限りした上で、施設内で感染者が出た場合」では
その銭湯・温浴施設の責任やその後の人々の反応等も全く違うと思います。
これから書く情報や対策を正しく理解し実行する事が、感染拡大防止だけではなく、
その店、そのお客さん、その業界を守る事にも繋がります。


こうした緊急時こそ
「正しい情報を集めて、まずは落ち着いて状況を判断し、適切に判断する事が大切です」


感染症対応の基本的考え方

新型コロナウィルス等の感染症への具体的な対策

 ・銭湯や温浴施設側の対応・対策
 ・もし、従業員や利用者に新型コロナ感染者が出たら・・・
 ・お客さんに求める対応
 ・感染症の対応の中で注意すべき点




まず基本の考え方として、
今年3月に厚生労働省から出た最新の『浴場業の振興指針』の中に
今回のような「感染症への対応」について書かれた部分があるので、そこを参考にすべきだと思います。
※「浴場業の振興指針」は、公衆浴場(主に銭湯)に対して、国・厚生労働省から出ているガイドラインです。
銭湯経営者や働いてる人、関連業者も内容についてはよく理解しその上で判断行動するべきです。



『浴場業の振興指針』(令和2年3月公布)には、今回のような感染症の対策について以下のようにあります。

『衛生問題への対応
 衛生課題は、浴槽等におけるレジオネラ症防止対策を講じることはもとより、インフルエンザ等の感染症への対応が必要であり、営業者にとどまらず、保健所等衛生関係機関及び公益財団法人都道府県生活衛生営業指導センター(以下「都道府県指導センター」という。)等との連携を密にして対応することが求められる。
 衛生問題は、営業者が一定水準の衛生管理をしている場合、通常、頻繁に発生するものではないため、発生防止に必要な費用及び手間について判断しにくい特質がある。しかし、一旦、感染症が発生した場合には、多くの利用者に被害が及ぶことはもとより、営業自体の存続が困難になる可能性があることから、日頃からの地道な衛生管理の取組みが重要である。
 また、こうした衛生問題は、個々の営業者の問題にとどまらず、業界全体に対する信頼を損ねることにもつながることから、組合及び連合会には、組合員、非組合員双方の営業者が自覚と責任感を持ち、衛生水準の向上が図られるよう、継続的に知識及び意識向上に資する普及啓発並びに適切な指導及び支援に努めることが求められる。』

感染症

浴場業の振興指針(令和2年3月公布)より引用 



すなわち感染症対策は、個々の銭湯や浴場組合が勝手に判断するのではなく
近隣の感染状況や対応について一番把握している保健所等と協力・協議し、
適切に対応する事が求められています。
通常の入浴営業、また人が集まるイベント、行政と行っている主に高齢者向けの事業について、
実施する必要性とそれに対するリスク等を十分に検討した上で、判断すべきだと思います。


こうした緊急時の対応については、災害対応の時も同様ですが、
過度に怖がるのではなく、また過度に楽観視するのでもなく、
「正しい情報を集めて、まずは落ち着いて状況を判断し、適切に判断する事が大切です」


現時点で、銭湯の全国団体「全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)」や東京・各県の浴場組合から、
各銭湯に対し適切な指示や対応策が下りてきておらず、対応が各県浴場組合や各銭湯任せてなっています。

同業種であるスーパー銭湯や日帰り温泉等の温浴施設の多く、また日本サウナ・スパ協会
同じ生活衛生分野の理容や美容の組合が、
今回の新型コロナウィルスに対する具体的な対策を取っているのに、
銭湯業界は残念ながら危機感も薄く、そのような対策や対応が全く出来ていないのが現状です。
※追記。その後、3月26日以降に東京都浴場組合から追加の文章が出ましたが、まだ十分と言える内容ではないです。

銭湯経営者は、レジオネラ菌等については詳しい知識を持っていますが、
それ以外の多くの感染症や感染予防対策については、ほぼ一般人と同じレベルの知識です。
各銭湯は現在、適切な対応・予防策がなんなんか分からず、確実に混乱しています。
また、感染者が出た地域と出ていない地域では、そこの銭湯にも新型コロナへの意識に温度差が出ています。
それに対する銭湯の方の不安の声や問い合わせが当方にまで届いてきています。

今後、もし銭湯の利用者や従業員から新型コロナの感染者が確認された場合、
個々の銭湯がバラバラの対応をし始める可能性があり、その点を非常に危惧しております。





新型コロナウイルスの感染が拡大している状況なので、銭湯や温浴施設の対応策の一例や注意点を書きます。
以下の書かれた内容は、厚生労働省や同業種・他業種の店舗や団体の情報や対策を参考にした内容です。
こうした情報が、銭湯や温浴施設の適切な新型コロナ等の感染症対策に繋がれば良いと思い、書きました。
決して以下の内容が「絶対的に正しい」ものではないです。状況や対応は常に変化します。その点ご理解ください。
まずは上記に書いた通り、各地の保健所との協力協議が最優先です。
また現在、厚生労働省から多くの新型コロナウィルスについての情報が出ています。
こちらで最新の情報や対応・予防策を学びましょう。 → 厚生労働省・新型コロナウイルス感染症について


◎銭湯・温浴施設側の対応・対策

1.衛生管理の徹底。

・人がよく触れる場所の清掃・除菌の徹底
接触感染を予防するためには、手がよく触れるところ、たとえば、ドアノブ、スイッチ、手すり、エレベーターのボタン、テーブルやカウンター、共用で使うもの(トングやメニュー等)などについて、消毒用アルコールや界面活性剤を含む住居用洗剤等で定期的な清拭をすることが有効です。特に小さなお子さんが来店する機会が多い施設については、こまめな清拭をお願いします。
引用元新型コロナウイルスに関するQ&A「集客施設を運営する方へ」

銭湯・温浴施設などでは、上記の場所の他にロッカーや下駄箱、洗面所、ドライヤー、イス・ソファ等
トイレや浴室の桶・椅子等も、人がよく触れる場所に当たると考えられます。
消毒用アルコールや界面活性剤を含む住居用洗剤、次亜塩素酸ナトリウム等で定期的な清拭をすることが有効。
巡回清掃や通常より清掃の回数を増やす対応が必要。(2時間に1回以上推奨)

・アルコール消毒液等の設置
希望するお客さんが使えるように、入口や受付にアルコール消毒液の設置。

※「次亜塩素酸水」については現時点で新型コロナウイルスへの有効性や
空間除菌をうたった次亜塩素酸水の噴霧の安全性が、確認されていないので推奨はしません。



・共有のクシや、トイレのタオル、ジェットタオルの使用中止
利用者が共有して使う物は、そこから感染症が広がる可能性もあるので使用を中止しましょう。
また、ジェットタオルもウィルスの飛散の可能性があるので止めている所が多いです。


2.定期換気。利用者の施設滞在時間の短縮、混雑(人の密度)を緩和。

・定期的な換気の実施
・機械換気(空調設備、機械換気設備による換気)
・窓をあけての換気。30分に1回(数分程度)、可能ならば2方向の窓を開けて、空気が流れるように配慮する。

・不特定多数が仮眠や長時間滞在が可能な「休憩スペース」「仮眠スペース」等の利用休止。
冒頭に書いた熊本市の温浴施設では、新型コロナ感染者は休憩スペースで長期間寝泊まりしていたという情報もあります。
特に感染が確認されている地域では、施設内の上記のようなスペースはすぐに利用休止すべきだと思います。

・飲食スペース、サウナについては、それぞれの店で検討
特に大勢が長い時間密集した密閉空間で過ごす可能性はあるサウナは休止する事が望ましいですが、
それぞれの施設の特性や混雑状況に大きな差もあるので
各施設ごとに休止、営業時間短縮や衛生対策を判断する必要があると思います。

・イベントや行政との事業の検討
人の集まるイベントや行政との事業(主に高齢者向けの入浴事業等)については
イベントの規模や実施する必要性とそれに対するリスク等を十分に検討し、必要に応じ行政や保健所、浴場組合との協議の上で
開催の延期や休止を決定すべきだと思います。

・密閉した空間で人が密集・密接しない工夫
国・厚生労働省やそれぞれの自治体から注意喚起が出されているように
「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集空間」「間近で会話や発声する密接場面」は
クラスター(感染者の集団)と呼ばれる感染が広がりやすいとされています。
上記で書いた定期換気の実施や、混雑や人の密集が起こらないようにする店側の工夫配慮が必要。
引用元・ 厚生労働省・「密」を避けて外出しましょう
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3.従業員の健康管理の徹底。

・風邪などの症状・体調不良・発熱の従業員は休ませる。
当たり前の事ですが、体調も悪い人を無理に出勤させる・せざるえない勤務体制は止めましょう。
経営者・従業員の体調不良で通常の店舗運営が出来ないのであれば、休業や営業時間の短縮等の判断もありだと思います。
参考資料:新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
経済産業省「新型コロナウイルス感染症で 影響を受ける事業者の皆様へ」

・従業員の出勤時の体温チェックの実施

・従業員の咳エチケット・手洗いの励行

・マスクの着用については、このマスクの品薄状態なので、可能ならばというところだと思います。


3.新型コロナに対する正しい情報の掲示、情報収集

・咳エチケット・正しい手洗いの啓蒙
厚生労働省からこのような新型コロナ対策の掲示が出ています。施設内に掲示して、利用者に伝えましょう。
感染症対策・咳エチケットと手洗い(PDF)
感染症対策

・近隣の感染状況等、正しい最新情報の把握
ネット情報や不確かな噂話デマを鵜呑みにせず、正しい情報を得るようにしましょう。
厚生労働省・新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルスを防ぐには(PDF)
000599644.jpg



※もし、従業員や利用者に新型コロナ感染者が出たら・・・

もし、従業員や利用者に新型コロナウィルス感染者が出たら
すぐに地元の保健所に連絡・その指示に従ってください。

従業員の家族等に感染者が出たなど、経営者や従業員が濃厚接触者であることが疑われる場合や
また、以下の症状が経営者・従業員に見られる場合は、
・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。
(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。
※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合

 ↓ ↓ ↓
新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター か
新型コロナウイルスに係る厚生労働省電話相談窓口 に連絡し、その指示に従ってください。



◎お客さんに求める対応

・風邪などの症状、体調不良、発熱(37.5℃以上)がある方には、入店をご遠慮いただく。
銭湯は、他の施設よりも高齢の方の利用者が多く、一度感染者が出たらそこから広がる可能性があります。
また、いまだに体調不良を入浴等の熱で治すという考え方を持っている方も多くいます。
この状況ですし、風邪や体調不良・熱のある方については、来店をご遠慮いただくべきだと思います。

・咳エチケットや正しい手洗いの実施のお願い
厚生労働省から出ている感染症対策を、施設内に掲示して利用者に伝え、実施してもらいましょう。
感染症対策・咳エチケットと手洗い(PDF)
感染症対策



◎新型コロナウィルス等の感染症の対応の中で注意すべき点

銭湯・温浴施設側が、誤った情報やデマを拡散したり
新型コロナウィルス等の感染症に対する不当な偏見や差別を煽るような文章・対応を
店側は絶対にしてはいけません


もう既に、一部の銭湯や浴場組合の出した文章の中に
「(2月下旬の段階で)新型コロナウィルスが蔓延いたしております」や「非常事態宣言が出ました」等の
誤った情報や利用者の不安を過度に煽る文章が見受けられています。
情報を書くのであれば、ネット情報や不確かな情報ではなく、公的な機関から出てる正式な情報のみにすべきです。
また「コロナウィルスは熱に弱いから、入浴やサウナが効果がある」
「銭湯はお湯の消毒に次亜塩素酸を使ってるから安全」などの民間療法レベルの不確かな情報を
(利用者側が言うのは勝手ですが) 店側が出すのは止めるべきだと思います。

従業員や利用者に対して、不当な偏見や差別を煽るような言動や対応はしてはいけません。
また、利用者全員に「入店時のマスク着用を強く求める」等の過剰なコロナ対策もするべきではないと思います。

経営者は、体調不良の従業員が休みやすい職場環境、配慮、十分な保障体制が必要です。
今回の新型コロナウィルスによる利用者や従業員に対する不当な扱いや解雇等が起こらないようにしなければなりません。
参考資料:新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)
新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)





最後に繰り返しになりますが、緊急時こそ
「正しい情報を集めて、まずは落ち着いて状況を判断し、適切に判断する事が大切です」

全国の銭湯・温浴施設の利用者・従業員に
新型コロナウィルスの感染者が出ないことを。
また、今回の感染拡大や世の中の不安が一日も早く収束する事を願っています。


銭湯・奥の細道

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