「銭湯のミライとは?② ~ここがへんだよ浴場組合~」
○「銭湯のミライとは?② ~ここがへんだよ浴場組合~」
銭湯の未来や現在銭湯が抱えている問題について
銭湯、浴場組合、銭湯ファンという3つの視点で書いていきます。
今回は、2回目「浴場組合」編です。
前回1回目 「銭湯の多様化とそれを許容する事」 ←読んでいない方は是非読んでみてくだい
~ここがへんだよ浴場組合~
そもそも、浴場組合とは?
銭湯関係者と、銭湯マニアでなければ、全く知らない団体だと思います
正式には、「公衆浴場業生活衛生同業組合」といい、要するに銭湯・お風呂屋さん(一般公衆浴場)の同業者の集まりです。
全国41都道府県に2800(軒)くらいの加盟銭湯があるそうです。
詳しい事は→ こちら「全国浴場組合について」 みてください。
東京都などの大都市圏はほとんどの「一般公衆浴場」がこの浴場組合に加入していますが、
地方によっては加入していない浴場が多かったり、県下の銭湯の数が減りすぎて浴場組合が消滅してる県もあります。
役割としては、
銭湯同士のネットワーク、お役所(国・県・市)との窓口・補助金の受け取り、色々な費用の貸付等々なのかな?
加入している浴場は、毎月組合費(金額は県によってだいぶ違うようなのであえて書きません)を本部に納めています。
全国各地いろいろな銭湯の話を聞けば聞くほど
結局、誰の為になんの目的であるのか、存在意義が???な部分が多い団体です。
誰も指摘しませんが、(そもそも浴場組合について外部の人が書いた文章が皆無)
近年の銭湯の衰退の一因が、浴場組合にあるのは間違いないです!
僕個人は一銭湯ファンであり、風呂屋で働いた事もなければ、浴場組合の関係者でもありません。
そういった意味でこの文章は説得力が薄いかもしれません。
でも外部の人間だからこそ、見えてくる事もあるし、
内部の人間だと色々しがらみがあって書けない事も書けたりします。
そういった事を理解した上で以下の文章も読んでください。
◎いま、浴場組合がやめるべきこと。
書き始めたら、すごく長文になってしまいましたが、時間のある時にでも少しずつ順番に読んでください。
①「外国人」と「浴育」推しをやめましょう!
②「前年踏襲」をやめましょう!
③「横並び」や「足の引っ張り合い」をやめましょう!
④「現状維持」ではなく、『開拓者』の精神を!
①「外国人」と「浴育」推しをやめましょう!
←全国浴場組合HPスクリーンショット
浴場組合の事業の主なものに、「公衆浴場の活性化対策(利用促進事業)」があります。
上の全国浴場組合のHPみてもらえば分かる通り
ここ近年の全国浴場組合の重点取り組み課題は、「外国人への銭湯アピール」と「浴育」です。
※あと、浴場組合が大好きな言葉としては、「地域コミュニティ」「日本の文化」なんてのがあります。
外国人旅行者へのアピールは2020年の東京オリンピックを見越して更に力入れてるように感じますが
そもそも訪日外国人が行きたいのは「温泉」であって「銭湯」ではないんじゃないですか?!(この辺は僕ももうちょっと調べる必要あり)
仮に外国人が日本の入浴文化に興味があって銭湯に入りたいと思っていても、
その恩恵に預かれる銭湯は東京や京都等の観光地の一部の銭湯だけでしょう。
確かに海外(外部)から評価されるのはうれしいと思いますが
大半の銭湯が関係ない事を全国の銭湯あげて取り組むのには非常に疑問を持ちます。
他にやる事いっぱいあるだろう!!! というのが正直な感想です。
(例えば、全国の銭湯の全軒一覧とマップを作るとか)
浴育についても同様です。
子ども(親子)が多い風呂屋はにぎやかで活気があり、僕自身そういう銭湯は大好きです!
でも、子どもや若い人がお客として多い銭湯は、特別「浴育」活動に力を入れているようには感じません。
浴育活動なんか力入れなくても若いお客が自然に来ています。
前回書いた通り、銭湯の総合力・質を上げていけば、家族連れや若い人もも自然に増えてくると思います。
浴育のポスターや紙芝居で実際に子どもが増えたという銭湯はあるのかな?
訪日外国人へのアピール・浴育ともにそれ自体は決して悪い事ではありません。
繰り返しになりますが、
でも、まず先に取り組むべき課題はいっぱいあり、まずはそっちからでしょう! という話です。
銭湯業界の廃業が続く現状を見ていると、
今の浴場組合は
「自分の家の中で何人も病気になったり死んだりしているのに
家の主は、外国人や他人の子どもの事ばかり追いかけてる」ように映ります。
地元の人達に銭湯の魅力を伝えられてないのに(伝える努力をしていないのに)
どうして外国人や子どもにその魅力を伝える事が出来るのでしょうか?
アピール活動がしたいなら、まず地元!
明日から常連さんになってくれる可能性のある近隣の人達にアピールする方法を考えるべきです。
今後いつ日本に来てくれるか分からない旅行者にアピールするよりは
成果が出やすいし、費用対効果も明らかに高いはずです。
トップが決めた“ステキな(実情にそわない)目標”につきあわされ
下は自分たちの本当の問題に向き合えない...
古い組合、悪い組織の典型的事例...
②浴場組合の前年踏襲をやめましょう!
風呂屋の業界に限らず、古い組織・古い会社(創業が古いという意味ではない)ほど
どうしても「前年踏襲」が慣例化してしまう事が多くあります。
特に銭湯はある種、毎日毎年の繰り返しです。そうなってしまうのも理解できます。
前年と全く同じなら誰も文句言わずスルーで通るのに
少しでも(良い方向に)変えようとすると、途端に色々な所からヨコヤリが入る・・・
色々な銭湯の人に話聞くと
年々浴場組合での仕事や役回り、研修等が増え大変な負担になっていると言います。
それはそうでしょう。銭湯の数は全盛期の3分の1以下になっているのに
浴場組合の組織や研修等はそのままなんだから、当然仕事が回ってくる頻度も高くなります。
組合の仕事や研修も、銭湯にとって本当に役立つものならば良いのですが、現状そうでないものも多いようで...
そういう浴場組合に関する(金銭面や人的)負担は大きくなる一方
本当に必要な事はなかなか実現できない。本当の問題になかなか取り組む事ができない。
近年、浴場組合を抜ける銭湯が増えてきているというのも納得です。
というか、考えのある銭湯や経営努力してる銭湯が抜けていってるという現状を
浴場組合の理事さん達はちゃんと受け止めるべきです!
ある県の浴場組合の理事をやられている銭湯に、県下の銭湯の事を問い合わせたら
「趣味で銭湯まわってるヤツには教えない!」という驚きの名言(暴言)を頂いた事があります。
(↑この銭湯、実名あげてもいいけど今回はそれが目的ではないので止めておきます)
銭湯経営者の為でもない、風呂に入りに行く人の為でもない
一体誰のための何のための「浴場組合」のなのか、もう一度考える必要があります。
前章では、アピール活動の「外国人」と「浴育」推しについて書きましたが
浴場組合の他の事業や活動でも、似た事例はたくさんあるはずです。
毎年継続しているの事業でも本当の意味や効果があるのか?
面倒であっても、そのねらいや目的から改めて見直し・考えてみる必要があると思います。
話し合った上で前年と同じ内容・結論になったとしても、それはそれで意味のある事です。
議論を尽くしての「前年踏襲」と、何も考えずにする「前年踏襲」では、まったく意味が違います!!!
③「横並び」や「足の引っ張り合い」の体質を変えましょう!
正直、前2章は普通の会社や組織でもよくある事です。
今すぐ変えるべきは、浴場組合というか銭湯業界の「横並び」や「足の引っ張り合い」の精神です。
これが根深く、一番問題です。
公衆浴場業生活衛生同業組合は、遡れば江戸時代の湯屋株仲間から始まり
明治・大正・昭和初期に「乱立し数が増えすぎた浴場に一定のルールや規律を作る」為に各県で作られました。
その後、昭和40年代の最も浴場の数が増えた時代を経て、銭湯の減少が問題化している現在に至る訳です。
誤解を恐れずに言うと、
浴場組合の精神は、“100年以上前の銭湯が増え始めた時代”のもの
組合の組織としては、“約50年前の銭湯最盛期”の形を引きずっています。
それは、無理がきて当然です。
そもそも
「なんで銭湯の営業時間ってどこも大体一緒なんだろう?」と疑問に思いませんか。
各銭湯によって多少違うけど、営業時間15時~23時くらいが基本になっていますよね。
これは、一日動いて夕方・夜に銭湯で汗や汚れを落とす生活サイクルの人が多いのが一番の理由ですが、
他にも理由があります。
それは、その昔浴場組合が地域の銭湯の営業時間を一律に縛った事があったからです。
大正・昭和初期、銭湯が増えすぎ乱立しそれぞれの入浴料金もいろいろ、
営業時間も深夜2時3時まで営業してる所もあったりバラバラの状況でした。
そうした浴場同士の過度な競争によって銭湯の疲弊や共倒れを抑えるために
浴場組合が作られて、その中で色々なルールや規約が決められた訳です。
そうした100年前の精神が今も銭湯業界では色濃く残っています。
いくつか実例をあげてみましょう。
都内23区のとある銭湯では
一度来たお客さんに次回の入浴料が割引になる券を配る店独自のサービスをしていました。
ですが、その事が浴場組合内で問題になり吊るし上げにあって入浴料割引券を止めさせられたそうです。
入浴料の事は浴場組合内では非常にシビアな問題です。
多くの銭湯のご主人が口を揃えて言います
「銭湯の入浴料は絶対に動かせない!それは法律で決まっているから。そもそも銭湯は物価統制令という・・・」
↑これは半分合っていて半分間違えです。
本来、法律で決まっているのは入浴料金の上限であり、下げる事は各浴場の営業判断・自由に出来るはずなんです。
実際、浴場組合加入の銭湯でも県内の入浴料が揃っていない県もありますし
法律でガッチリ値段が縛られているのだったら、
入浴回数券(での実質割引)や、イベント事で子どもの入浴料無料も違法ですよね?
※浴場組合と入浴料金の関係や歴史を書きだすと
それだけでまるまる一本記事が書けるくらいの内容なので、詳しくは書きませんが
浴場組合の歴史=入浴料金の改定問題。と言えるくらい重要な案件でした。
昭和43~45年の「物価統制令廃法問題」等何度かで自由価格への移行も検討されましたが
その度にもめにもめた結果、現在の形になっている経緯があります。
なので入浴料金の問題は、浴場組合内での“アンタッチャブル”になっていると想像できます。
とある町の銭湯では、お客さんの為に浴室にサウナ付けたいと思いましたが
そこの地域は他の浴場がサウナ付けていなかったので、他の浴場と設備を横並びにする為に
サウナ設置の許可が下りなかったそうです。
お客さんの為に良くしようとした事が、浴場組合内では問題になるなんて、やっぱり変ですよね。
まあ、上の事例が全ての場所に当てはまる訳ではないですが、
こうした浴場同士の「横並び」の精神は日本中で残っています。
この横並びの精神、さらに良くないのが
いい銭湯をお手本にみんなで高いレベルを目指そう!という「上への“横並び”」ではなく、
出来てない・やらない銭湯の低いレベルにみんなが合わせるという「下への“横並び”」になっている事です。
これが、自分の銭湯を良くしよう!お客さんの為にこれをしよう!とする
前向きな風呂屋の「足を引っ張る」結果になってきたのです。
良い所・人気のある所の真似をして自分もさらに伸びる、これは商売ではよくある事だし、仕事でもそうだと思います。
こうした競争原理的なものが銭湯業界ではほとんど機能してこなかったのです。
銭湯が増えすぎて乱立していた時代には、共倒れを防ぐ為皆が共存していく為に
そうしたルールや強い縛りが必要だったかもしれませんが、
現在は銭湯が減り続けています。
そうした中で昔のような「出る杭は打たれる」体質は、銭湯業界全体として非常にマイナスだと思います。
このまま、「横並び」の精神で、全国の銭湯みんな仲良く一緒に廃業しますか?
前回、書いたように
変わりたい銭湯は変わっていく。
今のまま変わりたくない銭湯はそのままでもいいが、他の浴場を引っ張るような事はしない。
こうした体質や考えの変化
「銭湯の多様化とそれを許容すること」が浴場組合や銭湯の中で今求められています。
ここまでほぼ全編、浴場組合批判の展開してきましたが
すべてが悪い訳ではありません。浴場組合もまた変わり始めています。
東京も最近は、区・市単位での独自のイベントやHP等の取り組みが多く見られるようになりましたし、
東京都浴場組合も変わってきているのを感じます。
(HPの刷新と冊子での「1010」廃止には色々意見もあったみたいですが、僕は英断だと思います)
風呂屋すら読まない「全国浴場新聞」も、読みたい箇所が増えてきました。
全国でも浴場組合のあたらしい動きが出ています。
兵庫浴場組合の「銭湯王国展」や、三重浴場組合のスタンプラリーもその一つです。
また、浴場組合らしくない浴場組合、熊本浴場組合が動き出したのも喜ばしい事です。
こうした動きが全国に広がればいいと思います!
きれいにまとめたと見せかけておいて第4章です。
もしかすると、ここが一番大事かも?
④「現状維持」ではなく、『開拓者』の精神を!
「浴場組合あるある」としてよく聞くのが
組合の中には、意識が高く現状を変えようとする浴場経営者もいるけど、
組合のトップに、県下一 頭の固い風呂屋のオヤジがどっしりと座っていて
なかなか話が前に進んでいかない...
浴場組合の非常に残念なのは
組合での上の立場(理事長・理事)の人達の多くが、『開拓者』ではないという事です。
浴場組合黎明期(明治~昭和初期)混沌とした銭湯業界の中で、
警察署長と戦い、県や国、役所に怒鳴りこんで
自分たちの権利・補助等をもぎ取ってきた先人達。
戦中・戦後のどん底の燃料不足の時代
燃料の薪や木炭の配給を受けるために山奥で薪切りの勤労奉仕したり、
終戦直後は当時余ってた電気を直接湯船にぶっ込んでお湯を沸かしたり
リヤカー押して空襲で燃え残っている資材集めに奔走した先人達。
そして、浴場組合としての活動が活発化し銭湯の数も増え続けた昭和30年代
昭和43年全国の銭湯の数が最大になり銭湯黄金時代とその直後のオイルショックを経験した先人達。
正直、その活動の全てが良いとは思いませんが
いま銭湯に普通に入れているのはこの先人達の努力のおかげだと思います。
この時代の先人達は、『開拓者』として力を持っていました!
問題を解決する為に自ら考え・行動し、煮え湯にも浸かってきた“熱い”人達だと思います!
自分たちの生業である「風呂屋」を命懸けでやってきたんだな。と言う事が資料や年表からも伝わってきます。
なんか異常に「ギラギラ」してます!!!
それに比べ
近年の浴場組合の上にいる人達は、多くが銭湯経営2代目・3代目以降の人達です。
最初から自分の城(銭湯)があり、先人達が切り開いた世界を
現状維持(実際はそれも出来なかった訳ですが)してきた世代です。
ギラギラ感うすいです。
ここに、ある銭湯関係の資料があります。
「公衆浴場の問題と対策」という資料で
銭湯における問題点とそれに対する対策・解決策が書かれています。
簡素化されてますが、かなり突っ込んだ内容で、銭湯経営者なら参考になると思います。
問題点
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対 策
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これ埼玉県衛生部環境衛生課がまとめた資料で、
埼玉県の浴場組合の資料に添付されてました。
日付よく見て欲しいんですが、これ最近の資料ではなく、昭和60年、30年前の資料なんです!
実は、最近言われている銭湯における諸問題(利用者減、施設老朽化、経営者の高齢化、燃料問題等)は
すでに銭湯の数が徐々に減り始めた昭和50年代(1975年~)から
実態調査に基づいた資料が作られて組合内では問題になっていたのです。
そうした問題点やそれに対する改善案が示されていながら
抜本的改革や本気の対策が取らないまま問題を放置した結果、
年々浴場の経営状況は悪化、廃業する銭湯が続出。現在の状況にに至っているという訳です。
取り組むべきは、やっぱり「外国人アピール」や「浴育」なんかじゃないんです!
もちろん「時代の流れだ、しょうがない」と片づける事も出来ますが、
やはり、問題を先送りし本気で取り組まなかった昭和50年代以降の浴場組合には
現在の銭湯衰退に対する責任があると思います。
もし、この記事を
浴場組合を内部から変えようと頑張っている銭湯経営者の方が見ていたら、とてもうれしいです。
あなたが浴場組合で問題に感じ、変えようと思っている事は正しいです!是非やるべきです!
風呂屋業界に入って、最初に感じた違和感。それはとても大事です。
でも正しい事がすべて簡単に通るとは限りません。
年数と権力だけで考えのない人につぶされるかもしれません。
でも、あきらめず熱意とビジョンを持って、繰り返し今年ダメなら来年と提案し続ければ必ず通るはずです!
現状維持ではなく、『開拓者』の精神を持って
ぬるま湯に浸かりきっている連中に、“熱い”煮え湯をぶっかけてやってください!!!
参考資料:
『全浴連三十年史』 編:全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会 1990年発行
『全浴連50年 来し方から展望へ』 編:全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会 2008年発行
『埼浴六十年のあゆみ』 編:埼玉県公衆浴場業環境衛生同業組合 1985年発行
『京都極楽銭湯読本』 著:林宏樹 淡交社 2011年発行
その他、各県浴場組合HP
第一回 銭湯編 「銭湯の多様化とそれを許容する事」
第二回 浴場組合編 当記事
第三回 銭湯ファン編 ◎~銭湯ファンは風呂屋に火をつけろ!~
◎番外編 「~数から銭湯を見てみよう!~」
◎番外編 「~10年後あなたの街に銭湯は残ってますか?~」
個人的に大好きな愛媛県八幡浜・大正湯さん
銭湯の未来や現在銭湯が抱えている問題について
銭湯、浴場組合、銭湯ファンという3つの視点で書いていきます。
今回は、2回目「浴場組合」編です。
前回1回目 「銭湯の多様化とそれを許容する事」 ←読んでいない方は是非読んでみてくだい
~ここがへんだよ浴場組合~
そもそも、浴場組合とは?
銭湯関係者と、銭湯マニアでなければ、全く知らない団体だと思います
正式には、「公衆浴場業生活衛生同業組合」といい、要するに銭湯・お風呂屋さん(一般公衆浴場)の同業者の集まりです。
全国41都道府県に2800(軒)くらいの加盟銭湯があるそうです。
詳しい事は→ こちら「全国浴場組合について」 みてください。
東京都などの大都市圏はほとんどの「一般公衆浴場」がこの浴場組合に加入していますが、
地方によっては加入していない浴場が多かったり、県下の銭湯の数が減りすぎて浴場組合が消滅してる県もあります。
役割としては、
銭湯同士のネットワーク、お役所(国・県・市)との窓口・補助金の受け取り、色々な費用の貸付等々なのかな?
加入している浴場は、毎月組合費(金額は県によってだいぶ違うようなのであえて書きません)を本部に納めています。
全国各地いろいろな銭湯の話を聞けば聞くほど
結局、誰の為になんの目的であるのか、存在意義が???な部分が多い団体です。
誰も指摘しませんが、(そもそも浴場組合について外部の人が書いた文章が皆無)
近年の銭湯の衰退の一因が、浴場組合にあるのは間違いないです!
僕個人は一銭湯ファンであり、風呂屋で働いた事もなければ、浴場組合の関係者でもありません。
そういった意味でこの文章は説得力が薄いかもしれません。
でも外部の人間だからこそ、見えてくる事もあるし、
内部の人間だと色々しがらみがあって書けない事も書けたりします。
そういった事を理解した上で以下の文章も読んでください。
◎いま、浴場組合がやめるべきこと。
書き始めたら、すごく長文になってしまいましたが、時間のある時にでも少しずつ順番に読んでください。
①「外国人」と「浴育」推しをやめましょう!
②「前年踏襲」をやめましょう!
③「横並び」や「足の引っ張り合い」をやめましょう!
④「現状維持」ではなく、『開拓者』の精神を!
①「外国人」と「浴育」推しをやめましょう!

浴場組合の事業の主なものに、「公衆浴場の活性化対策(利用促進事業)」があります。
上の全国浴場組合のHPみてもらえば分かる通り
ここ近年の全国浴場組合の重点取り組み課題は、「外国人への銭湯アピール」と「浴育」です。
※あと、浴場組合が大好きな言葉としては、「地域コミュニティ」「日本の文化」なんてのがあります。
外国人旅行者へのアピールは2020年の東京オリンピックを見越して更に力入れてるように感じますが
そもそも訪日外国人が行きたいのは「温泉」であって「銭湯」ではないんじゃないですか?!(この辺は僕ももうちょっと調べる必要あり)
仮に外国人が日本の入浴文化に興味があって銭湯に入りたいと思っていても、
その恩恵に預かれる銭湯は東京や京都等の観光地の一部の銭湯だけでしょう。
確かに海外(外部)から評価されるのはうれしいと思いますが
大半の銭湯が関係ない事を全国の銭湯あげて取り組むのには非常に疑問を持ちます。
他にやる事いっぱいあるだろう!!! というのが正直な感想です。
(例えば、全国の銭湯の全軒一覧とマップを作るとか)
浴育についても同様です。
子ども(親子)が多い風呂屋はにぎやかで活気があり、僕自身そういう銭湯は大好きです!
でも、子どもや若い人がお客として多い銭湯は、特別「浴育」活動に力を入れているようには感じません。
浴育活動なんか力入れなくても若いお客が自然に来ています。
前回書いた通り、銭湯の総合力・質を上げていけば、家族連れや若い人もも自然に増えてくると思います。
浴育のポスターや紙芝居で実際に子どもが増えたという銭湯はあるのかな?
訪日外国人へのアピール・浴育ともにそれ自体は決して悪い事ではありません。
繰り返しになりますが、
でも、まず先に取り組むべき課題はいっぱいあり、まずはそっちからでしょう! という話です。
銭湯業界の廃業が続く現状を見ていると、
今の浴場組合は
「自分の家の中で何人も病気になったり死んだりしているのに
家の主は、外国人や他人の子どもの事ばかり追いかけてる」ように映ります。
地元の人達に銭湯の魅力を伝えられてないのに(伝える努力をしていないのに)
どうして外国人や子どもにその魅力を伝える事が出来るのでしょうか?
アピール活動がしたいなら、まず地元!
明日から常連さんになってくれる可能性のある近隣の人達にアピールする方法を考えるべきです。
今後いつ日本に来てくれるか分からない旅行者にアピールするよりは
成果が出やすいし、費用対効果も明らかに高いはずです。
トップが決めた“ステキな(実情にそわない)目標”につきあわされ
下は自分たちの本当の問題に向き合えない...
古い組合、悪い組織の典型的事例...
②浴場組合の前年踏襲をやめましょう!
風呂屋の業界に限らず、古い組織・古い会社(創業が古いという意味ではない)ほど
どうしても「前年踏襲」が慣例化してしまう事が多くあります。
特に銭湯はある種、毎日毎年の繰り返しです。そうなってしまうのも理解できます。
前年と全く同じなら誰も文句言わずスルーで通るのに
少しでも(良い方向に)変えようとすると、途端に色々な所からヨコヤリが入る・・・
色々な銭湯の人に話聞くと
年々浴場組合での仕事や役回り、研修等が増え大変な負担になっていると言います。
それはそうでしょう。銭湯の数は全盛期の3分の1以下になっているのに
浴場組合の組織や研修等はそのままなんだから、当然仕事が回ってくる頻度も高くなります。
組合の仕事や研修も、銭湯にとって本当に役立つものならば良いのですが、現状そうでないものも多いようで...
そういう浴場組合に関する(金銭面や人的)負担は大きくなる一方
本当に必要な事はなかなか実現できない。本当の問題になかなか取り組む事ができない。
近年、浴場組合を抜ける銭湯が増えてきているというのも納得です。
というか、考えのある銭湯や経営努力してる銭湯が抜けていってるという現状を
浴場組合の理事さん達はちゃんと受け止めるべきです!
ある県の浴場組合の理事をやられている銭湯に、県下の銭湯の事を問い合わせたら
「趣味で銭湯まわってるヤツには教えない!」という驚きの名言(暴言)を頂いた事があります。
(↑この銭湯、実名あげてもいいけど今回はそれが目的ではないので止めておきます)
銭湯経営者の為でもない、風呂に入りに行く人の為でもない
一体誰のための何のための「浴場組合」のなのか、もう一度考える必要があります。
前章では、アピール活動の「外国人」と「浴育」推しについて書きましたが
浴場組合の他の事業や活動でも、似た事例はたくさんあるはずです。
毎年継続しているの事業でも本当の意味や効果があるのか?
面倒であっても、そのねらいや目的から改めて見直し・考えてみる必要があると思います。
話し合った上で前年と同じ内容・結論になったとしても、それはそれで意味のある事です。
議論を尽くしての「前年踏襲」と、何も考えずにする「前年踏襲」では、まったく意味が違います!!!
③「横並び」や「足の引っ張り合い」の体質を変えましょう!
正直、前2章は普通の会社や組織でもよくある事です。
今すぐ変えるべきは、浴場組合というか銭湯業界の「横並び」や「足の引っ張り合い」の精神です。
これが根深く、一番問題です。
公衆浴場業生活衛生同業組合は、遡れば江戸時代の湯屋株仲間から始まり
明治・大正・昭和初期に「乱立し数が増えすぎた浴場に一定のルールや規律を作る」為に各県で作られました。
その後、昭和40年代の最も浴場の数が増えた時代を経て、銭湯の減少が問題化している現在に至る訳です。
誤解を恐れずに言うと、
浴場組合の精神は、“100年以上前の銭湯が増え始めた時代”のもの
組合の組織としては、“約50年前の銭湯最盛期”の形を引きずっています。
それは、無理がきて当然です。
そもそも
「なんで銭湯の営業時間ってどこも大体一緒なんだろう?」と疑問に思いませんか。
各銭湯によって多少違うけど、営業時間15時~23時くらいが基本になっていますよね。
これは、一日動いて夕方・夜に銭湯で汗や汚れを落とす生活サイクルの人が多いのが一番の理由ですが、
他にも理由があります。
それは、その昔浴場組合が地域の銭湯の営業時間を一律に縛った事があったからです。
大正・昭和初期、銭湯が増えすぎ乱立しそれぞれの入浴料金もいろいろ、
営業時間も深夜2時3時まで営業してる所もあったりバラバラの状況でした。
そうした浴場同士の過度な競争によって銭湯の疲弊や共倒れを抑えるために
浴場組合が作られて、その中で色々なルールや規約が決められた訳です。
そうした100年前の精神が今も銭湯業界では色濃く残っています。
いくつか実例をあげてみましょう。
都内23区のとある銭湯では
一度来たお客さんに次回の入浴料が割引になる券を配る店独自のサービスをしていました。
ですが、その事が浴場組合内で問題になり吊るし上げにあって入浴料割引券を止めさせられたそうです。
入浴料の事は浴場組合内では非常にシビアな問題です。
多くの銭湯のご主人が口を揃えて言います
「銭湯の入浴料は絶対に動かせない!それは法律で決まっているから。そもそも銭湯は物価統制令という・・・」
↑これは半分合っていて半分間違えです。
本来、法律で決まっているのは入浴料金の上限であり、下げる事は各浴場の営業判断・自由に出来るはずなんです。
実際、浴場組合加入の銭湯でも県内の入浴料が揃っていない県もありますし
法律でガッチリ値段が縛られているのだったら、
入浴回数券(での実質割引)や、イベント事で子どもの入浴料無料も違法ですよね?
※浴場組合と入浴料金の関係や歴史を書きだすと
それだけでまるまる一本記事が書けるくらいの内容なので、詳しくは書きませんが
浴場組合の歴史=入浴料金の改定問題。と言えるくらい重要な案件でした。
昭和43~45年の「物価統制令廃法問題」等何度かで自由価格への移行も検討されましたが
その度にもめにもめた結果、現在の形になっている経緯があります。
なので入浴料金の問題は、浴場組合内での“アンタッチャブル”になっていると想像できます。
とある町の銭湯では、お客さんの為に浴室にサウナ付けたいと思いましたが
そこの地域は他の浴場がサウナ付けていなかったので、他の浴場と設備を横並びにする為に
サウナ設置の許可が下りなかったそうです。
お客さんの為に良くしようとした事が、浴場組合内では問題になるなんて、やっぱり変ですよね。
まあ、上の事例が全ての場所に当てはまる訳ではないですが、
こうした浴場同士の「横並び」の精神は日本中で残っています。
この横並びの精神、さらに良くないのが
いい銭湯をお手本にみんなで高いレベルを目指そう!という「上への“横並び”」ではなく、
出来てない・やらない銭湯の低いレベルにみんなが合わせるという「下への“横並び”」になっている事です。
これが、自分の銭湯を良くしよう!お客さんの為にこれをしよう!とする
前向きな風呂屋の「足を引っ張る」結果になってきたのです。
良い所・人気のある所の真似をして自分もさらに伸びる、これは商売ではよくある事だし、仕事でもそうだと思います。
こうした競争原理的なものが銭湯業界ではほとんど機能してこなかったのです。
銭湯が増えすぎて乱立していた時代には、共倒れを防ぐ為皆が共存していく為に
そうしたルールや強い縛りが必要だったかもしれませんが、
現在は銭湯が減り続けています。
そうした中で昔のような「出る杭は打たれる」体質は、銭湯業界全体として非常にマイナスだと思います。
このまま、「横並び」の精神で、全国の銭湯みんな仲良く一緒に廃業しますか?
前回、書いたように
変わりたい銭湯は変わっていく。
今のまま変わりたくない銭湯はそのままでもいいが、他の浴場を引っ張るような事はしない。
こうした体質や考えの変化
「銭湯の多様化とそれを許容すること」が浴場組合や銭湯の中で今求められています。
ここまでほぼ全編、浴場組合批判の展開してきましたが
すべてが悪い訳ではありません。浴場組合もまた変わり始めています。
東京も最近は、区・市単位での独自のイベントやHP等の取り組みが多く見られるようになりましたし、
東京都浴場組合も変わってきているのを感じます。
(HPの刷新と冊子での「1010」廃止には色々意見もあったみたいですが、僕は英断だと思います)
風呂屋すら読まない「全国浴場新聞」も、読みたい箇所が増えてきました。
全国でも浴場組合のあたらしい動きが出ています。
兵庫浴場組合の「銭湯王国展」や、三重浴場組合のスタンプラリーもその一つです。
また、浴場組合らしくない浴場組合、熊本浴場組合が動き出したのも喜ばしい事です。
こうした動きが全国に広がればいいと思います!
きれいにまとめたと見せかけておいて第4章です。
もしかすると、ここが一番大事かも?
④「現状維持」ではなく、『開拓者』の精神を!
「浴場組合あるある」としてよく聞くのが
組合の中には、意識が高く現状を変えようとする浴場経営者もいるけど、
組合のトップに、県下一 頭の固い風呂屋のオヤジがどっしりと座っていて
なかなか話が前に進んでいかない...
浴場組合の非常に残念なのは
組合での上の立場(理事長・理事)の人達の多くが、『開拓者』ではないという事です。
浴場組合黎明期(明治~昭和初期)混沌とした銭湯業界の中で、
警察署長と戦い、県や国、役所に怒鳴りこんで
自分たちの権利・補助等をもぎ取ってきた先人達。
戦中・戦後のどん底の燃料不足の時代
燃料の薪や木炭の配給を受けるために山奥で薪切りの勤労奉仕したり、
終戦直後は当時余ってた電気を直接湯船にぶっ込んでお湯を沸かしたり
リヤカー押して空襲で燃え残っている資材集めに奔走した先人達。
そして、浴場組合としての活動が活発化し銭湯の数も増え続けた昭和30年代
昭和43年全国の銭湯の数が最大になり銭湯黄金時代とその直後のオイルショックを経験した先人達。
正直、その活動の全てが良いとは思いませんが
いま銭湯に普通に入れているのはこの先人達の努力のおかげだと思います。
この時代の先人達は、『開拓者』として力を持っていました!
問題を解決する為に自ら考え・行動し、煮え湯にも浸かってきた“熱い”人達だと思います!
自分たちの生業である「風呂屋」を命懸けでやってきたんだな。と言う事が資料や年表からも伝わってきます。
なんか異常に「ギラギラ」してます!!!
それに比べ
近年の浴場組合の上にいる人達は、多くが銭湯経営2代目・3代目以降の人達です。
最初から自分の城(銭湯)があり、先人達が切り開いた世界を
現状維持(実際はそれも出来なかった訳ですが)してきた世代です。
ギラギラ感うすいです。
ここに、ある銭湯関係の資料があります。
「公衆浴場の問題と対策」という資料で
銭湯における問題点とそれに対する対策・解決策が書かれています。
簡素化されてますが、かなり突っ込んだ内容で、銭湯経営者なら参考になると思います。
問題点
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対 策
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引用:『埼浴六十年のあゆみ』 63ページ 編:埼玉県公衆浴場業環境衛生同業組合
これ埼玉県衛生部環境衛生課がまとめた資料で、
埼玉県の浴場組合の資料に添付されてました。
日付よく見て欲しいんですが、これ最近の資料ではなく、昭和60年、30年前の資料なんです!
実は、最近言われている銭湯における諸問題(利用者減、施設老朽化、経営者の高齢化、燃料問題等)は
すでに銭湯の数が徐々に減り始めた昭和50年代(1975年~)から
実態調査に基づいた資料が作られて組合内では問題になっていたのです。
そうした問題点やそれに対する改善案が示されていながら
抜本的改革や本気の対策が取らないまま問題を放置した結果、
年々浴場の経営状況は悪化、廃業する銭湯が続出。現在の状況にに至っているという訳です。
取り組むべきは、やっぱり「外国人アピール」や「浴育」なんかじゃないんです!
もちろん「時代の流れだ、しょうがない」と片づける事も出来ますが、
やはり、問題を先送りし本気で取り組まなかった昭和50年代以降の浴場組合には
現在の銭湯衰退に対する責任があると思います。
もし、この記事を
浴場組合を内部から変えようと頑張っている銭湯経営者の方が見ていたら、とてもうれしいです。
あなたが浴場組合で問題に感じ、変えようと思っている事は正しいです!是非やるべきです!
風呂屋業界に入って、最初に感じた違和感。それはとても大事です。
でも正しい事がすべて簡単に通るとは限りません。
年数と権力だけで考えのない人につぶされるかもしれません。
でも、あきらめず熱意とビジョンを持って、繰り返し今年ダメなら来年と提案し続ければ必ず通るはずです!
現状維持ではなく、『開拓者』の精神を持って
ぬるま湯に浸かりきっている連中に、“熱い”煮え湯をぶっかけてやってください!!!
参考資料:
『全浴連三十年史』 編:全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会 1990年発行
『全浴連50年 来し方から展望へ』 編:全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会 2008年発行
『埼浴六十年のあゆみ』 編:埼玉県公衆浴場業環境衛生同業組合 1985年発行
『京都極楽銭湯読本』 著:林宏樹 淡交社 2011年発行
その他、各県浴場組合HP
第一回 銭湯編 「銭湯の多様化とそれを許容する事」
第二回 浴場組合編 当記事
第三回 銭湯ファン編 ◎~銭湯ファンは風呂屋に火をつけろ!~
◎番外編 「~数から銭湯を見てみよう!~」
◎番外編 「~10年後あなたの街に銭湯は残ってますか?~」
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